福岡市初の放射冷却塗料実証事業
福岡市が進める持続可能なエネルギー施策の一環として、「博多港ベイサイドミュージアム」において、初めての放射冷却塗料「Radi-Cool」の実証事業が開始されました。このプロジェクトは、出光エナジーソリューションズ株式会社とラディクールジャパン株式会社による共同取り組みで、全国の政令指定都市で行われるのは初めての試みです。
1. 実証事業の背景
福岡市では、2040年度までに温室効果ガス排出実質ゼロというビジョンを掲げ、特に港湾エリアにおけるカーボンニュートラルを目指す「博多港カーボンニュートラルポート形成計画」を策定しました。この計画には、公共・民間のエネルギー使用量を削減し、温室効果ガスの排出を抑えるための様々な施策が含まれています。「博多港ベイサイドミュージアム」に放射冷却塗料「Radi-Cool」を施工するこの実証事業は、その一環として実施され、検証を通じて得られたデータをもとに他施設への導入が検討される予定です。
2. Radi-Coolの素材について
放射冷却塗料「Radi-Cool」は、2017年に米国コロラド大学の研究チームによって開発され、国際的な科学誌『サイエンス』に発表されました。この塗料は、高い光反射率を持つ技術と、効果的に熱を放散する技術を組み合わせており、外部からの熱を効果的に拒否しつつ、屋内は快適な環境に保つことができます。具体的な製品には、シルバーフィルム、ウィンドウフィルム、一般的な塗料、ファブリックなどがあり、使用場所や目的に応じて選べます。
3. 期待される効果
実証事業では、「博多港ベイサイドミュージアム」の屋根に放射冷却塗料を施工し、温度データを測定してその効果を検証します。施工場所の温度を管理する装置も設置され、定期的なデータ収集が行われます。また、基礎データ取得や塗装工事は2025年に予定されており、詳しいスケジュールは以下の通りです:
- - 2025年6〜7月: 基礎データ取得および塗装準備
- - 2025年7〜8月中旬: 塗装工事(A・B棟の屋根上517㎡)
- - 2025年9〜10月: 計測と運用データの収集
- - 2025年11〜12月: 効果検証レポートのまとめ、福岡市への報告
4. 未来への展望
本事業から得られる結果を踏まえ、福岡市内に限らず、全国の公共施設や企業への放射冷却塗料の導入が期待されています。これにより、カーボンニュートラルの実現に寄与するだけでなく、持続可能な社会の実現に向けた重要なステップとなるでしょう。出光エナジーソリューションズ社は、エネルギーデータの収集や分析、塗装業務全体の管理を行い、ラディクールジャパン社は技術サポートを提供します。
実証事業を通じて、福岡市がどのようにして持続可能な未来に向かって進化していくのか、今後の展開に注目が集まります。