九州歯科大学が神経系と骨格系の新しいつながりを発見
九州歯科大学の生化学分野で、神経系と骨格系の驚くべき共通性についての研究が行われ、注目を集めています。遺伝子SLIT and NTRK like family member 1(Slitrk1)の骨芽細胞における存在が、骨の厚みの制御に関与していることが新たに解明されました。この発見は、神経系が骨形成に与える影響を示す重要なステップです。この研究成果は、2025年5月31日付の雑誌「iScience」に発表されています。
研究の要点
1.
Slitrk1の発見: Slitrk1は骨組織、特に骨芽細胞に豊富に存在し、骨芽細胞の分化と成熟を制御する役割を持っています。
2.
Slitrk1ノックアウトマウスの観察: Slitrk1が欠失したマウスは、野生型マウスと比較して骨の厚みが顕著に減少していることが確認されました。このことから、Slitrk1が骨に直接的な影響を与えることが示されています。
3.
骨芽細胞の分化能への影響: Slitrk1ノックアウトマウスの骨芽細胞は、分化能力が低下することが明らかになり、これが骨の健康にとって重要な要素であることが示唆されています。
4.
Tazと14-3-3タンパク質: Slitrk1は14-3-3タンパク質を介してTazの発現量を調節し、このメカニズムが骨芽細胞の分化に関与していることが確認されました。
研究の背景
骨には常に新しい骨を形成する骨芽細胞と、古い骨を吸収する破骨細胞が存在し、そのバランスが崩れると骨粗しょう症などの疾患を引き起こすことがあります。Slitrk1はトゥレット症候群の原因遺伝子の一つとも言われており、これまでトゥレット症候群患者において骨折の多さや骨の成熟の遅れが指摘されていましたが、そのメカニズムは不明でした。
研究結果と展望
九州歯科大学の白川智彦助教を中心とするチームは、長崎大学や産業医科大学、中国四川大学との共著により、Slitrk1の新しい機能を明らかにしました。Slitrk1が欠失した骨芽細胞では、Tazの量が減少し、骨芽細胞の分化が抑制されることを確認しました。これらの結果は、Slitrk1が骨形成において重要な役割を担うことを示しています。今後、研究はさらに拡大し、骨だけでなく骨格筋や脂肪、軟骨細胞へのSlitrk1の機能についても探求していく予定です。
研究の重要性
この研究は、神経系と骨格系の連携がいかに骨の健康に影響を及ぼすのかを理解するための重要な手がかりになるでしょう。従来の骨再生医療の枠を越え、神経と骨の複雑な相互作用に基づいた新たな治療法の開発が期待されます。この発見により、神経系をターゲットにした骨治療が進展する可能性もあります。
研究チームの感想
研究をリードした白川智彦助教は、7年にわたる努力の成果を発表できたことに感謝の意を示し、多数の協力者による支援があったからこその成功であると訴えました。今後の研究からも目が離せません。
この研究成果は、患者の骨の健康を守る新たな治療法の確立に寄与することが期待されており、九州歯科大学の研究が持つ意義はますます高まっています。