くら寿司が進める人手不足対策:体験型研修の新たな可能性を探る
日本の外食産業は、長年にわたって人手不足に悩まされています。その原因として、団塊世代の退職や少子高齢化が挙げられ、外食業界においては特に求職者数が常に求人数を上回る「超売り手市場」状態が続いています。このような状況の中で、くら寿司は独自の体験型研修を通じて従業員のエンゲージメント向上に努めています。
外食産業の現状と人手不足の影響
2024年度の飲食業調査によれば、調査対象の外食企業297社の25.4%が国内出店計画を下方修正している一方で、厚生労働省の調査でも「飲食物調理」の就業者に対する有効求人倍率は2.47倍、「接客・給仕」は2.68倍と、非常に高い水準で推移しています。外食産業特有の人手不足の原因は、求職者の減少だけではなく、働き方への考え方の変化や転職率の上昇とも密接に関連しています。
従業員体験(EX)の重要性
人手不足を解決するためには、今働き続ける従業員や新たに加入する人々が「この職場で働きたい」と思えるような環境を整えることが急務です。くら寿司では、EXを高めるために体験型研修を取り入れています。体験型研修は、モチベーションを高め、従業員が深く学ぶことができる可能性を秘めています。例えば、農業や漁業の現場を訪問しての実地研修など、実際の食材がどのように生産されているのかを体験することで、従業員はより深い理解と感謝を持つことができるようになります。
くら寿司の取り組み
くら寿司では、以下のような体験型研修を実施しています。
- - 農業・漁業研修: 従業員が実際に農業や漁業の現場を訪れ、自ら手を動かすことで食材への理解を深めます。
- - KURA-No.1 GRAND PRIX: 接客や調理の技術を競うコンテスト形式の研修。競争意識を活かしてモチベーションを引き出し、チームの一体感を醸成します。
このような取り組みを通じ、くら寿司は従業員のエンゲージメントを一層高め、離職率の低下にも成功しています。2024年はくら寿司史上、最も社員の離職率が低かった年であるとのことです。
採用の新トレンドと今後の課題
採用活動においては、ジョブ型採用や通年採用が進んでおり、企業は求職者から選ばれるような魅力を持った存在であることが求められています。また、企業理念の明示とそれに基づく社内の文化構築が重要視されています。リーダーは周囲のやる気を引き出す役割を担い、従業員が成長できる環境を提供することが求められています。
まとめ
くら寿司の体験型研修は、従業員のエンゲージメント向上に大きく貢献しており、他の外食企業にも参考にされるべきモデルケースと言えるでしょう。人手不足に悩むこの業界で、くら寿司がどのようにさらなる成長を遂げていくのか、今後も注目していきたいところです。