クリニックにおけるスタッフの離職問題
最近の調査によると、クリニックで勤務する看護師や医療事務、受付などのスタッフの約60%が、退職を検討した経験があるとのことです。この背景には、人事評価制度への不満や、クレーム対応に関する重圧が影響していると考えられます。
調査概要
株式会社保科製作所は、2025年7月29日から31日にかけて、クリニックで働くスタッフを対象に「クリニックの業務環境による働き手の満足度」についての調査を行いました。調査には1,016人が回答し、クリニックの業務環境が満足度に与える影響が探求されています。主な診療科は、内科や消化器内科、整形外科など多岐にわたります。
仕事の負担とクレームの現状
調査結果によると、クリニックにおけるクレームの発生源で最も多かったのは「予約・待ち時間」で、45.8%のスタッフがこの問題を指摘しました。診療や職員の対応に関するクレームもかなりの割合を占め、患者の期待とのギャップがトラブルの原因となっているようです。特に、待ち時間や予約トラブルは、業務フローの最適化が不十分なクリニックでは頻発している問題です。
クレームの対応方法についても、規模によって明確な差があります。スタッフが「記録を残し、再発防止策を講じている」と回答したのは、主に20人以上のクリニックでした。逆に小規模のクリニックでは、形式的な記録に留まりがちで、改善策の実施には至っていないケースが多いのです。
スタッフが感じる負担
スタッフの負担を減らすためには、どのような体制が求められるのでしょうか。調査で「クレーム対応において負担を感じる点」として最も多かったのは「精神的ストレス」であり、35.4%のワーカーがその点を挙げています。これは、適切な対応方法がわからない状態で業務を担うことによるストレスを反映しています。また、相談体制や一貫性のある対応方針が不足していることも、現場の混乱を助長している可能性があります。
人事評価制度の課題
次に、人事評価制度についても調査結果が示されており、クリニックの規模が大きくなるにつれて、人事評価制度が整備されている傾向がありました。定期的な面談と評価基準が設定されているクリニックほど、スタッフの満足度が高いという結果が出ています。しかし、人事評価制度が存在するものの内容が知られていない、または存在しないクリニックでは、スタッフの満足度は著しく低いということもわかりました。
「人事評価制度に不満を感じる理由」としては、「評価が不明確」と「昇給の仕組みが曖昧」といった声が多く、納得感のない制度運用がスタッフのモチベーションに悪影響を及ぼす結果となっています。
離職意向と業務改善
最終的に、調査参加者の約64%が業務負担や人事評価制度による不満から、退職を考えたことがあると答えています。特に人事評価制度の不透明さやクレーム対応への支援体制の不備が、離職を選ぶ要因として挙げられることが明らかになりました。
まとめ
今回の調査から、クリニックの現場で働くスタッフが業務に対する高い負担と人事評価制度の不明瞭さに課題を感じていることが浮き彫りになりました。これらの問題を放置することは、スタッフの離職や職場環境の悪化を引き起こす可能性が高いです。スタッフが求める「クレーム・インシデント管理機能」などのシステム導入を進め、業務効率化とともに業務環境の改善を図ることが、これからのクリニック運営には求められます。