ASC認証がもたらす水産業の未来
2025年2月21日に、スクレッティング株式会社が日本で初めてASC(Aquaculture Stewardship Council)認証を取得しました。この出来事は、東アジアにおける初の試みであり、国内の水産業界にとっても画期的な転換点となります。多くの人々が日常的に水産物を消費する中、その持続可能性がますます重要視されている今、ASC認証を取得したスクレッティング株式会社の取り組みについて見てみましょう。
水産業界の現状と課題
過去50年間で、世界の漁獲量は2倍以上に増加し、魚は栄養源として大きな役割を担っています。しかし、乱獲や温暖化の影響で、各地で水産資源の減少が懸念されており、日本では特に漁業生産量が1984年をピークに減少傾向にあります。現在、養殖が水産物供給の重要な手段として注目されていますが、その養殖に使用される飼料は天然由来の魚粉などに依存しています。これにより、漁業資源の枯渇が懸念されているのです。
日本の水産物生産の約24%は養殖によって賄われていますが、IUU(違法・無報告・無規制)漁業由来の水産物が市場に流通するリスクが指摘されています。消費者が手に取る水産物が「どこで、どのように」生産や流通されているのかを見極めることが、大変重要になってきています。トレーサビリティの確保と責任ある調達が水産業の持続可能な発展のキーポイントとなります。
ASC認証の意義とその特徴
ASC認証は、責任ある養殖方法で生産された水産物を対象とした国際的な認証制度です。この認証を受けることで、労働環境の確保や児童労働の排除、環境への配慮が明示され、消費者は持続可能な選択をすることができます。特に、ASC認証を取得した飼料は、環境に優しい方法で調達された原料を使用したものです。これにより、消費者がASC認証の水産物を選ぶことが、持続可能な水産業の構築に貢献することになります。
消費者の役割
私たち消費者が、ASC認証された水産物を選ぶことは、業界全体の環境意識を高める一助となります。持続可能な選択が増えることで、業界はより責任ある生産方法へとシフトしていきます。また、企業側には説明責任がありますが、消費者の選択もまた同じく重要です。
養殖業での飼料の重要性
養殖で使用される飼料は、主にマイワシなどの小魚から作られていますが、その供給は減少傾向にあります。世界的な人口増加もあり、これからの水産業において飼料の確保は重要な課題です。また、違法漁獲や環境問題が取り沙汰される今日、飼料の原料に対するトレーサビリティが求められています。具体的には、ブラジルのアマゾン熱帯雨林破壊の問題などが挙げられます。
スクレッティング株式会社の挑戦
スクレッティング株式会社は、20年以上にわたり、サステナブルな水産業の実現に取り組んでいます。原料の調達過程では、漁獲領域や野生の小魚の環境保全に注力し、業界内で初めて低魚粉の飼料を開発しました。これは、持続可能なシーフードを提供するための第一歩として、他の企業にも影響を与えています。
今後も、環境負荷を抑えた飼料の開発や、魚粉に依存しない新たな原料の探索が期待されます。このような企業の取り組みにより、持続可能な未来を築く土台は、ますます強固なものとなるでしょう。
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