大牟田市が実現する廃食油リサイクルの新潮流とSDGsプロジェクト

大牟田市が描く循環型社会の未来

福岡県大牟田市において、まちの資源を生かした「Roa(d)cal SDGs Project」が始まります。このプロジェクトは、地域における廃食油リサイクルを通じて、持続可能な社会の実現を目指すもので、家庭や飲食店から集められた使用済み油が、地域の道路や歩道に使用されるアスファルト合材の製造に生かされます。

地域密着型の資源循環

大牟田市では、1918年に創業した田中鉄工株式会社が、このリサイクルスキームの中心となっています。家庭や飲食店から発生する廃食油は、地域内で直接アスファルト合材に利用される重油や軽油の代替燃料として使用されます。具体的には、2025年からは、マルミヤストア大牟田店やグリーンコープ生協にて廃食油の回収を開始する予定です。このように、廃食油を地域で循環させることによって、CO₂や各種有害物質の排出を削減することが期待されます。

環境に優しい取り組み

このプロジェクトの背景には、大牟田市が「ゼロカーボンシティ」の実現を目指しているというビジョンがあります。明治時代から日本の近代化を支えた大牟田市は、現在新たに持続可能な地域循環型社会への転換を進めています。市民、企業、行政の協力によって、2050年には二酸化炭素排出量を実質ゼロにすることを目指しています。

SDGs教育プログラムの実施

田中鉄工株式会社は、地域の教育機関と連携し、未来を担う子どもたちに向けたSDGs教育プログラムにも力を入れています。廃食油がリサイクル可能で貴重な資源であることを学ぶための「夏エコ教室」などのイベントを通じて、子どもたちに環境問題の重要性やリサイクルの価値を伝えています。このような教育を通じて、次世代の意識を高める取り組みが進められています。

効果的なトレーサビリティと市民の理解

今後は、廃食油の回収から再生、活用までのプロセスを可視化することで、市民が自らの行動が環境にどのように影響を与えるのかを実感できるようにする予定です。また、トレーサビリティやカーボンフットプリントの仕組みを導入し、リサイクルによるCO₂削減量などを具体的に示すことで、地域住民の理解と参加を促進していきます。

廃食油リサイクルの重要性

現在日本では、家庭から出る廃食油の96%がゴミとして捨てられており、有効活用ができていない現状があります。事業系の廃食油はほぼリサイクルされていますが、地域内で循環していないことが大きな課題となっています。このプロジェクトの成功が、他地域における廃食油リサイクルのモデルケースとなることが期待されています。