野菜未利用部と鶏糞で資源循環を実現
近年、世界は持続可能な発展を求めています。その中でも特に注目されているのが、農業における資源の有効活用です。日本国内で進行している課題の一つが食品ロスで、事業系の食品廃棄物が多く発生しています。そこで、キユーピー株式会社は学校法人東京農業大学、株式会社ウエルクリエイトと共同で、野菜未利用部と鶏糞を利用した新たな肥料の研究に取り組むことを発表しました。このプロジェクトは、資源を循環させながら農業の持続可能性を高めることを目的としています。
研究の背景
日本の農業では、化学肥料の原材料をほとんどを海外から輸入しているため、原材料の価格変動が経営に影響を与えやすいのが現状です。また、約464万トンもの食品ロスが毎年発生しており、その内の約231万トンは事業活動によるものです。このような状況を受けて、キユーピーグループは製造過程で発生した野菜未利用部を有効活用する取り組みを進めています。
研究の目的
この共同研究では、野菜未利用部を廃棄せず、鶏糞と組み合わせた堆肥(野菜鶏糞堆肥)としての活用法を探求しています。具体的には、肥料成分が豊富な鶏糞と野菜未利用部の両方を活かし、それらを混合することで植物の成長促進効果を確認しました。
研究結果の発表
2025年9月に開催される日本土壌肥料学会新潟大会にて、本研究成果がポスター発表される予定です。研究の結果、野菜鶏糞堆肥は従来の野菜堆肥に比べ、窒素やリン酸を多く含み、その効果は化学肥料に匹敵することが確認されました。
具体的には、コマツナの栽培試験において、野菜鶏糞堆肥は100%のリン酸肥効率を示し、その収量は化学肥料と同等となりました。また、野菜鶏糞堆肥と化学肥料を併用することで、化学肥料からのリン酸利用率が向上することも確認されています。
サステナビリティへの貢献
キユーピーグループは、2030年までに野菜未利用部の有効活用率を90%以上にするという目標を掲げています。この取り組みを通じて、資源を有効活用し、循環型の社会を実現することを目指しています。今回の研究が成功すれば、養鶏業界の課題解決にも寄与するでしょう。
今後の展望
キユーピーは今後もこの研究を進め、農業と環境に優しい持続可能な肥料の開発を続けていく予定です。野菜未利用部と鶏糞の組み合わせが、これからの農業の未来へどう貢献できるのか、多くの期待が寄せられています。これにより、食品ロスを減少させるだけでなく、農業生産性を向上させる新しい循環型の取り組みが実現することに期待が寄せられています。