協立電機、シンクリモートで製造現場の技術継承を加速

製造現場において、技術の高度化が進む中で、現場の技術継承の重要性が高まっています。協立電機株式会社は、その新たな手法として、株式会社クアンドが開発した遠隔支援ツール「SynQ Remote（シンクリモート）」を導入しました。このツールは、熟練者の知見をリアルタイムに現場に届け、若手技術者の育成とトラブル対応を同時に可能にする画期的なシステムです。

背景: 技術継承の課題と現場の声

製造業界全体では、熟練技術者の高齢化や若手技術者の不足が深刻な問題となっています。「教える人がいない」「伝える仕組みがない」という現場の声が増え、知識の空洞化が懸念されています。協立電機でも同様に、全国に広がる顧客拠点への出張が必要で、電話や写真での情報伝達だけでは、細かいニュアンスを伝えることが難しいとされていました。

遠隔での「教えながら直す」体制の構築

シンクリモートの導入以降、若手技術者が顧客の工場を訪れた際、そこでトラブルが発生すると、社内にいる熟練技術者がリアルタイムでサポートする体制が整っています。例えば、若手がスマートフォンを通じて現場の映像を共有し、熟練者が「ここを見せて」「このケーブルを確認して」といった指示を出すことで、実際の作業を円滑に進めることができるのです。こうしたやり取りにより、現場特有の感覚的情報が共有され、迅速なトラブルシューティングが実現しました。

協立電機の第一エンジニアリング本部 KDサポートセンター長の梅島様は、「現場に行かなくても、一緒に立ち会っている感覚があります。若手が“自分で解決できた”という成功体験を積めるのが大きいですね」と述べています。

効果: 信頼に基づく新たな連携体制

シンクリモートの導入は、営業、技術、顧客のリアルタイムの連携を強化しました。今までは、技術的な質問に「後日確認します」としていた状況から、「今すぐ確認します」と即時対応に変わりました。これによって、顧客への信頼感が高まり、CS品質の向上にも貢献しています。また、熟練者の知見がチーム全体に共有される流れも生まれ、全体的なスキル向上につながっています。

課題と導入に伴う効果

- 現地対応によるダウンタイムの発生⇒遠隔での即時対応により復旧時間を短縮
- 若手とベテランのスキル差を解消するための知見の共有を促進
- 状況が正確に伝わらない問題を解消し、迅速な対応が可能に
- 全国拠点への移動負担を減少させ、業務効率を大幅に改善

AI議事録で「知識の資産化」を進める

協立電機では2025年9月から、シンクリモートに搭載された「AI議事録機能」の試験運用を開始しました。この機能により、遠隔支援中の会話や共有された画面が自動的に文字起こしと整理され、「どんな判断が行われたか」を可視化します。これにより、教育や品質管理に役立てることが期待されています。梅島様は、「この議事録を社内で共有すれば、若手教育や対応品質の均一化にも活かせると思います」と話しています。

シンクリモートの未来への取り組み

シンクリモートは単なる遠隔支援ツールではなく、熟練者が感じている違和感や見解を若手と共有することで、スキル伝承の機会を生み出す仕組みを目指しています。現場のやりとりを記録化することで、世代や距離を超えて知識が蓄積され、共有され続ける環境を作り出す挑戦です。私たちの目標は、人が育つ環境を提供し、製造業の未来が途切れない社会の実現です。今日もどこかの現場で、技術が生まれ、育まれている瞬間を大切にしていきます。