北九州市での救急医療情報システムの本格運用が開始
2025年1月より、北九州市において救急医療情報システム「NSER mobile」が本格運用されることが決まった。このシステムの導入により、地域の救急医療がよりデジタル化され、効率的な医療が提供されることが期待される、これは西日本や九州地方では初の試みとなる。
「NSER mobile」の目的と利点
「NSER mobile」は、救急隊と医療機関との連携を強化し、ペーパーレスでの業務遂行を実現することを目的としている。具体的には、救急隊がタブレットを使用して患者に関する情報をリアルタイムで医療機関と共有し、搬送先の選定や受け入れ判断を迅速に行えるようにする。これにより、適正な搬送が可能となり、病院収容の時間も短縮される見込みだ。
このシステムは、全国で7例目の導入となり、以前に導入された地域の実績も良好であったため、北九州市でも適用が決まった。具体的には、消防機関や約50の医療機関との連携を通じ、北九州市全域の約90万人に向けてサービスを提供する。
DX推進の背景
北九州市は2021年から「デジタルで快適・便利な幸せなまち」の実現を目指し、「北九州市DX推進計画」を策定。デジタル技術を活用することで利便性の向上や効率化を図り、地域の課題解決にも注力している。この計画の一環として、救急業務のデジタルトランスフォーメーションが進められている。実際に2023年4月から1年間、NSER mobileを使用した実証実験が行われ、効果が確認されたことも導入の決め手となった。
システムの運用内容
NSER mobileでは、救急隊に配布されたタブレットを用いて、医療機関とデジタル情報をやり取りし、より効率的な救急搬送を実現する。具体的には、以下のような内容が含まれる。
- - 各救急隊がタブレット端末を通じて、搬送先医療機関と患者情報を共有。
- - 医療機関は迅速に情報を受信し、受け入れの判断を下すことができる。
- - 適切な搬送先が選べない場合には、各救急隊が地元医療機関の受け入れ状況を閲覧しながら、最適な受入要請を行う。
- - 救急活動の引継ぎをペーパーレスで行うため、迅速な業務の進行が可能となる。
- - 救急報告書も登録されたデジタル情報を元に迅速に作成され、帰署後の出動体制の整備に貢献する。
「NSER mobile」の機能
「NSER mobile」は、救急現場と医療機関間のコミュニケーションを円滑にし、効果的な医療の提供を支援するために設計されている。タブレットに収集された傷病者情報は迅速に搬送先病院に送信され、事前の準備が効率化される。従来の電話や紙の帳票に依存せず、デジタルでのやり取りが行えることで全体の業務は格段に改善されるだろう。
また、事案情報の入力、病歴やバイタルサインの共有機能、交渉や履歴の追跡、救急報告書の作成機能、さらには事後検証機能などが実装される予定だ。これにより、患者の救急搬送から治療、検査、転院といった一連の流れをデジタルプラットフォームで管理し、今まで以上にスムーズな医療の提供が実現することになる。
このように、北九州市の提案する「NSER mobile」は、救急医療のインフラとして大いに期待され、多くの市民の命を守るための強力なツールとなるだろう。今後の展開が非常に楽しみである。