旅の入口に福岡の文化を宿す暖簾
福岡県筑紫野市に位置する「大丸別荘」は、創業から160周年を迎えた節目の年を迎え、地域の伝統を尊重しつつ新たな一歩を踏み出しました。今回注目すべきは、大丸別荘の旅館入口を彩ることとなった新しい暖簾。この特別な暖簾は、地元の有力絹織物業者である西村織物株式会社とのコラボレーションによって製作された、格式ある“博多織”による逸品です。
大丸別荘の地元文化への姿勢
大丸別荘は、訪れるお客様に「地元と共に営む宿づくり」をモットーに、筑紫野や福岡の恵みを生かした食材を利用してきました。これまでも、銘卵「うちのたまご」や白木牧場のジャージー牛乳を朝食に取り入れており、地域の文化と自然の豊かさを宿の体験に融合してきました。この度の暖簾制作は、地元文化を体験に取り入れる新たな試みとして位置づけられています。
暖簾の意義と設計
新しい博多織の暖簾の設計には4つの大切なポイントが盛り込まれています。まず、伝統の織技術が息づく素材の選定が重要で、密度のある生地を使用しており、絹の持つ落ち着いた光沢が玄関の風景に奥行きを与えます。次に、この暖簾はただの間仕切りではなく、訪れる人々を迎える“門”の役割も果たしています。さらに、筑紫野市に根ざした西村織物とコラボレーションして制作されたことで、地元文化を代表する一枚となっています。
特に和モダンな空間にも調和するデザインで、長年使用できる耐久性も考慮されているため、今後長い年月にわたりお客様を迎え入れるのにふさわしいものです。
西村織物の伝統と現代への挑戦
西村織物は、江戸時代から博多織屋として知られ、織元の伝統を継承する老舗です。同社の工場内には、織物に触れられるギャラリーショップ「ORIBA」があり、地域文化の発信の場としても親しまれています。自社内で、絹糸の選定から染色、図案、製織まで一貫して行える体制を整え、伝統的な帯の製作にとどまらず、バッグやインテリアファブリックといった新たな領域への挑戦も行っています。
今後の取り組み
今回の暖簾制作は、160周年記念プロジェクトの一環であり、今後も様々な取り組みが予定されています。館内での博多織を用いたインテリアアクセントの展開や、西村織物との共同ワークショップの開催、地元素材と伝統織物のコラボ商品開発などが計画されています。これにより、筑紫野・福岡の豊かな文化を体験として訪れるお客様に具体的に届けることを目指しています。
結びに
大丸別荘は、朝食などで地域の特産物を使用してきたように、暖簾という形で新たに「織物」という文化資産を宿の体験に加えました。創業160年の歴史を尊重しつつも、次の時代に向けて大丸別荘の歩みは続きます。地域や文化、人を結ぶ新たな“ふるさとステイ”の形を模索し、更なる発展を目指していくことでしょう。