久留米工業大学名誉教授が北京で招待講演
久留米工業大学(福岡県久留米市)の巨海玄道名誉教授が、2023年7月18日から20日にかけて中国の北京で開催されたSECUF-2025において招待講演を行いました。この国際会議は、中国科学院物理研究所主催のものであり、世界中から研究者が集まる重要なイベントです。
今回の講演では、巨海教授が「f及びd電子を含む凝縮系物質の高圧下における興味ある現象」という題目で発表を行いました。この研究は、久留米工業大学の共通教育科の江藤徹二郎教授との共同研究によるもので、特に高圧・低温・強磁場という極限環境における物質の特性に焦点を当てています。
講演の中で、ナノ構造Fe/Cr多層膜の巨大磁気抵抗(GMR)が圧力によってどう変化するのか、また、希土類六ホウ化物(RB6)の異常な圧縮特性について紹介されました。これらの特性は、将来的に高感度磁気センサやスピントロニクス材料としての利用が期待されています。
中国科学院物理研究所の印象
会期中には、中国科学院物理研究所(IOP)も訪れる機会がありました。巨海教授はこの研究所が新しいビルで多くの最先端の測定機器が整備されていることや、若い研究者たちが熱心に実験に取り組んでいる様子に感銘を受けたと語っています。彼のコメントによれば、日本の大学で見られるような熱気は、中国の若い研究者たちにも見受けられ、彼らの自信や英語のプレゼンテーション能力は非常に高いと感じたとのことです。
また、研究所の案内書によると、スタッフの多くが45歳以下であるということも印象的だったと述べています。20年以上前に北京を訪れた際には、国際会議の運営に苦労していた現地の人たちの姿が思い出され、今では基礎科学政策が確実に実を結んでいるということを実感したそうです。この30年ほどの間に中国の科学技術は急速に発展し、研究環境も大きく変わったと実感しています。
中国の国力と基礎科学
巨海教授は、中国の科学技術予算が増加している一方で、日本やアメリカでは削減傾向にある現状を憂いています。しかし、140億を超える人口を抱える中国の国力と、その中で育まれる若い才能には驚かされるばかりです。彼が講演で得た経験は、今後の研究活動や教育にとっても大きな刺激となることでしょう。
巨海 玄道教授のプロフィール
巨海玄道教授は、物理学の分野で固体物性の研究を行う専門家であり、元九州大学大学院理学研究院教授です。定年退職後は久留米工業大学の基幹教育センターで指導しており、現在は名誉教授としてその知識と経験を後進に伝えています。
今後も久留米工業大学と中国との国際的な研究交流の発展を期待しつつ、巨海教授の今後の活躍に注目していきたいと思います。